第一部 「出入国管理及び難民認定法」の改定法案について
改定入管法案の背景と内容 ビデオ講演:駒井知会(東京第二弁護士会)
オンラインセミナー入管法改定を考える 記録映像 | 日本カトリック難民移住移動者委員会(J-CaRM) (jcarm.com)
〇難民申請者の処遇過程
①来日し、入管局に難民申請 ②審査(平均25.4ヶ月)
⇒ ③難民認定 ④在留資格「定住者」
③難民認定不許可 ④自費出国
④入管収容 / 仮放免 (再度、難民申請) 「特別在留許可」
〇入管法の根本的な問題
「司法審査の欠如」
行政官である主任審査官が、司法審査を受けることなく収容令書を発付し、収容
できる。
「義務的な収容」
入管法が収容するという推定に基づいている。
「収容期間の上限の欠如」
退去強制令書を受けた移住者や庇護希望者を送還可能になる時まで、収容期間の上限も
なく、収容することができる。
「ノン・ルフーマン原則の違反」
「庇護・在留を認めるべき者を適切に保護する」としたノン・ルフールマン原則、すな
わち難民を、生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放、また
は送還してはならないとする国際的原則(難民条約第33条)に、明らかに違反する。
〇改定入管法における改悪
「強制送還拒否罪」
難民申請の回数を2回までに制限し、難民申請3回目以降は強制送還とする。
これを拒否した場合、「強制送還拒否罪」を適用する。
「監理措置」
現行の仮放免における保証人制度をより厳しくした「監理措置」制度に移行。
「仮放免逃亡罪」
仮放免中の逃亡に対し、「逃亡罪」を適用。「監理人」にも罰則を適用。
※ 「庇護・在留を求める者を適切に保護するための制度の適正化」として、入管法を改定
するのではなく、「難民申請者・超過滞在者に対する退去強制手続きの適正化」のため
の改定である。
【関連資料】
“Open Japan’s Gate for All”
すべての人に、日本の扉を開けてください
~難民申請者を追放する「出入国管理及び難民認定法」の改悪に反対する教会共同声明~
いま日本で生活している外国人(外国籍住民)は、日本の植民地支配に起因する在日コリアンをはじめ、1990年代を前後して急増した移住労働者や国際結婚移住女性、留学生や技能実習生など、300万人を超えます。
日本の教会とキリスト者は、これまで外国人の人権保障と共生社会をめざして、NGOや弁護士団体と共に、外国人住民基本法と人種差別撤廃基本法の制定を、日本政府と国会に求めてきました。また昨年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにあって、政府から支援を受けられない難民申請者(約1万人)や超過滞在者(約8万人)の窮状を救う活動をしてきました。
彼ら彼女らは、本国で迫害を受けて来日して難民申請をしましたが、難民として認定されず超過滞在となった人びとです。また、在留資格を失い入管施設に収容され、そこから仮放免されても、働くことが禁止され、住民登録がないため健康保険に入れず、困窮している人びとです。しかもコロナ感染拡大によって、家族も親族も同国出身者たちも失職して、仮放免者や超過滞在者たちを支えることができないという過酷な状況が現出し、今後、より深刻化することが予想されます。
ところが、日本政府は今年2月19日、このような人びとの窮状を放置したまま、「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の改定案を閣議決定し、国会に提出しました。
まず私たちが確認しなければならないことは、日本の難民受け入れ率は著しく低く、他国では認められるケースの難民申請が不認定とされている「難民鎖国:日本」の現実です(巻末の表1・表2)。このことは、国際社会の中でも劣悪な現状です。
今回の政府案は、閉鎖的、排除的現状を改善するものとはほど遠く、次のような制度を設けようとしています。
a.難民申請の回数を2回までと限定
この新制度は、難民認定率が1%にも満たない日本の難民認定制度に問題があります。
申請回数を制限して難民申請3回目以降は強制送還とする政府改定案は、「庇護・在留を認めるべき者を適切に保護する」としたノン・ルフールマン原則、すなわち難民を、生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放、または送還してはならないとする国際的原則(難民条約第33条)に、明らかに違反します。
b.退去強制を拒否する難民申請者・超過滞在者に対して「強制送還拒否罪」
この10年間で、強制退去命令を受けた外国人のうち97%が出身国などに帰国しましたが、残り3%の外国人(約3,000人)は帰国を拒否しています。難民申請者は、迫害を受けた出身国に帰国できないが故に帰国を拒否し、難民申請をするのです。また超過滞在者の多くは、長年日本で働き、家族を形成し、日本で生まれ育った子どもたちがいます。
それにもかかわらず、強制退去命令という「行政罰」に加えて、新たに「刑事罰」を設けることは、刑事手続きで刑務所に送り、それが終わると入管施設に送り、そこでまた帰国を拒否すれば刑事手続きに付す、という悪循環を難民申請者・超過滞在者に強いるものであり、非人道的な加重の懲罰制度です。
c.入管施設での長期収容の代替措置として、「監理措置」と「仮放免逃亡罪」
在留資格を失った外国人に対する現在の入管収容制度は、司法審査がなく、全件収容主義であり、収容期間が無期限です。入管収容施設では、家族や友人との面会は30分ほどの時間制限がつき、持病があっても許可がなければ病院に通院することもできません。そのため、収容者の病死、ハンスト、餓死が続いています。
このような難民申請者・超過滞在者の長期収容に対しては、国連の拷問等禁止委員会が2007年と2013年に、自由権規約委員会が2014年に、人種差別撤廃委員会は2018年に懸念を表明し、日本政府へ是正勧告を出しています。
そして国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会は2020年8月22日、「日本においては庇護申請をしている個人に対して差別的な対応をとることが常態化している」として、収容期間が無期限であることなどは、日本が加盟している自由権規約第9条1項(恣意的な拘禁の禁止)に違反し、また、入管収容について司法審査が定められていないことは、自由権規約第9条4項(自由を奪われた者が裁判所で救済を受ける権利)に違反し、「法的根拠を欠く恣意的な拘禁に当たる」という意見書を採択しました。
日本政府の改定案は、こうした国際人権機関の懸念と勧告をまったく無視するものです。政府改定案では、司法審査も収容期間の上限も設けず、仮放免における保証人制度をより厳しく「監理措置」制度に移行させ、その上、「逃亡罪」を新設するというものです。
これらの新制度は、難民申請を続け、かろうじて強制送還を免れ、何とか生きのびてきた人びとを、これまで以上に身体的、精神的に追い詰め、締め出そうとするものです。問題の根本的解決は、「難民申請者・超過滞在者に対する退去強制手続きの適正化」(日本政府案)ではなく、「難民として保護すべき制度の適正化」(難民条約)にあるのです。
まず、難民認定率が1%にも満たない日本の難民認定制度は、国際人権基準に沿った制度に抜本的に改正されるべきです。また超過滞在者は、日本で安心して生活できる在留資格が保障されるべきです。
「寄留者を虐待したり、圧迫してはならない。あなたたちはエジプトの国で寄留者であった
からである。」 (出エジプト記 22章20節)。
「実に、キリストはわたしたちの平和であります。二つのものを一つにし、御自分の肉に
おいて敵意という隔ての壁を取り壊し、規則と戒律ずくめの律法を廃棄されました。」
(エフェソの信徒への手紙 2章14、15節前半)
2021年 4月 22日
広島外キ連学習会2021
「難民・移住労働者と共に生きる」を考えるセミナー
第二部 広島における移住労働者の実情と問題について
スクラムユニオンへの相談から見える外国人労働者の実態
スクラムユニオン・ひろしま 委員長 土屋信三
1,「現代の奴隷制度」としての技能実習生制度
就労の自由がない
移動の自由がない
事業主に逆らえば強制帰国…背景としての多大な保証金(借金)
パスポートや印鑑、通帳の取り上げ(さまざまな人権侵害)
2017年11月からの「新入管法」=外国人技能実習機構の設立
2,実習制度の建前と実態
日本の優れた技術、技能の移転=国際貢献
実際は最低賃金の労働力、3年間の奉公=奴隷労働
出稼ぎとしての実習生…残業がないと不満
時給300円の残業代(とりわけ縫製業など)
1か月100~200時間を超える長時間残業、過労死しない方が不思議
3,最低賃金からさらなる収奪
家賃として一人2万円~2万5千円天引き、ぼろアパートに6人を詰め込む
水光熱費の過剰徴収 ひどい時には、電化製品などをリース
4,具体的事例
1)東広島市での赤ちゃん遺棄事件
2)(株)重井興業…暴行事件と強制帰国
3)(株)第一機工…パワハラ、暴行、強制帰国
4)ベトナム人実習生、Hさんの場合…賃金未払い、失踪、重大事故
5)M・Vさんの場合
5,背景としてのグローバル化
独占資本の海外進出、
最低賃金以下の労働力の存在=極端な賃金格差
日本国内での活用としての研修生・技能実習生制度
日系ブラジル人、ペルー人の減少…2世、3世の高齢化
リーマンショック後の帰国の増大
6,政府、資本の構想
数年間(3~5年)の労働を認めて、その後すみやかに国外退去
地方の疲弊と労働力不足→一定の方向転換
家族の移住は認めない=「移民問題」の発生を防ぐ
特定技能1号、特定技能2号のいい加減さ
つぎはぎだらけの政府構想、労働力が不足している14業種への導入
技能実習3年を経た者は、試験なしで「特定技能1」へ移行できる
技能実習制度の建前と「特定技能」との関係はどうなるのか?
受け入れ機関の不明確さ、試験の内容と実施はどうなるのか?
日本語能力(N4以上)だけが明確で、求められる技能の実質は何か?
特定技能の労働者に対する社会保障はどうなるのか?
社会保険、厚生年金制度の適用はどうなるのか?
「日本人と同等の賃金」とは何か?
実習生制度にも同様の文言があるが、それは最低賃金を指している。
「相談窓口の設置」を謳うが、実際に外国語通訳を含めた相談員を配置できるの
か? 全国300カ所などできるのか?
7,われわれの構想はいかにあるべきか?
多文化・多民族共生の具体性について
外国人労働者を「労働力」としてではなく、生きた人間として、労働者として迎え入れる
こと
1)また悲劇が繰り返された ー東広島市での「死体遺棄事件」をどう見るかー
〈 事件の概要 〉
新聞報道によると、11月12日、東広島市志和町のベジスタイル(株)で働くベトナム人技能実習生、スオン・ティ・ヴォットさんが、死体遺棄容疑で逮捕された。逮捕容疑は実習先会社の寮の敷地内に、生んで間もない女児の遺体を埋めて遺棄した疑いである。
そして、東広島警察は12月3日、ヴォットさんを殺人容疑で再逮捕した。生まれた赤ちゃんは、出産後まもなく低体温症で死亡したとされる。警察は、出産後、赤ちゃんを放置したことを持って殺人と見なした可能性が高い。
〈 事件の背景〉
ベトナム人技能実習生だけではないが、実習生たちは3年間の技能実習の期間、恋愛や結婚、妊娠することを禁じられている。もしも妊娠したことが分かると実習途中で強制帰国させられても異議を申し立てないといった契約を結ばされている。これは母国での送り出し機関との契約ということが多い。われわれもそのような裏契約を直接手に入れたことはないが、何人かの女性実習生が証言してくれたことがある。そのため、妊娠すると非合法の中絶薬を手に入れて中絶しようと試み、母子ともに危殆に瀕するといった事件も起きている。
ヴォットさんも取り調べの中で、「出産すればベトナムに帰らされる。帰国せずに日本で働きたかった」と供述しているという。彼女は日本が好きで、日本で働きたいと言っているのではない。莫大な借金を抱えて実習生として日本に来て、その借金の返済もままならない中で、ベトナムに帰ることはできないと言っているのである。およそ、ベトナムからの実習生たちは100万円ぐらいの借金を抱えて来日する。100万円と言えば、ベトナム人実習生にとって約3年分の年収に相当する。最初の1年間で借金を返し、残りの2年間で300万円を蓄えて帰国したいというのが、彼らの希望である。もし、1年に満たないような期間で、強制帰国となれば、母国で膨大な借金を抱えて路頭に迷うことになりかねない。それは彼らにとって、大きな恐怖である。
悲劇は繰り返された
ベジスタイル(株)の事業主や監理団体のもみじ協同組合(広島市安佐北区)は、ヴォットさんの妊娠に気づかなかったと言っている。だが、こんなことが信じられるだろうか?妊娠して5か月ぐらいまでは、妊娠したことに気づくのは本人だけということはありうるかもしれない。だが、個体差はあるとは言え、妊娠8か月から臨月にもなれば、体型的にも大きな変化が表れ、誰の目にも明らかとなる。それに気づかなかったとすれば、日々接する事業主や月に一度は会っているはずの監理団体は何をしていたのかということになる。事業主や周りの従業員たちは、取材に答えて、「なんで相談してくれなかったのか?」「相談してくれれば手の打ちようがあったのに」と言っている。だが、彼女は妊娠したと言えば、強制帰国を迫られると考え、言うことさえできなかったのである。おそらく、ヴォットさんは大きな不安と恐怖の中で、ひとりで悩み続けていたに違いない。
そして、彼女は頼る人もなく、病院にも行くことができず、ひとりで、自力で出産に向き合わなければならなかった。それが、どれほど大変なことなのか、出産を経験した女性ならば容易に想像できるだろう。ある女性は、「よく母親の命があったものだ」と言っていた。これはその通りだと思う。近代的な設備を持つ病院でも、出産は命がけだという話をよく聞く。そんな中で産み落とした赤ちゃんの面倒まで見れずに死亡させたからといって、殺人罪の適用はひどすぎる。
〈 問題の本質は何か 〉
今回の事件の根本的問題は、実習生制度に内包された矛盾である。外国人技能実習生たちの人権を守って、労働者として日本に受け入れることなく、単なる安価な「労働力」として使い捨てる構造にこそ問題がある。なぜ、彼らに移動の自由がないのか、就労の自由がないのか、暴行や暴言を受けても、セクハラに遭っても泣き寝入りしなければならないのか?ひどい事業主に雇われた時、日本人ならば退職すればいい話である。だが、実習生たちは退職もできず、逃げることもできない。逃げれば、「失踪」「不法就労」として、犯罪者として追われることになるからである。これが、「現代の奴隷制」「3年間の人身売買」として国際的に批判されるゆえんである。
今回の問題をヴォットさんの個人的問題にすり替えることは許されない。彼女が犯した刑事的責任は償わなければならない。だが、それは副次的問題であり、根本的な問題は実習生制度をなくし、抜本的な移民政策、すなわち、彼らを生きた、生身の労働者として受入れていく制度を作り上げていくことである。さもなければ、今回のような悲劇は繰り返されるだろう。
2)組合員 グエン・Tさんについて
ベトナム人技能実習生男性、1997年8月26日生まれ、23歳
技能実習生2号ロ(在留期限2021年1月31日)、来日2019年1月
職種:建設(掘削作業)
実習実施者:(株)重井興業(岡山県岡山市北区下高田1134番地1)
事業内容:産業廃棄物収集運搬業、総合解体工事業
監理団体:アイ・ディ・エス協同組合
(岡山県岡山市南区西市108-3西市ワイズビル3F
Tさんの現住所:岡山市南区西市496-3コーポグレイス101
(監理団体の寮)
〈 事件の概要 〉
2020年8月30日朝、会社に行くと社長に呼ばれ、「休みすぎじゃ」などと怒鳴りつけられた。他にもいろいろと言われたが、日本語なので何を言われたかわからなかった。また社長に殴られるのかと思って、とっさに近くにあったスパナを持った。すると、社長は「もういい、寮に帰れ!」と言って、Tさんを寮に帰した。ことの推移が気にくわなかった重井社長は、会長である自分の父親に「(Tさんのところへ)行ってやってこい」と言った。(このことは当時の日本人同僚が、社長から直に話を聞いており、録音もある。)
翌日、社長の父親、重井 勉会長が寮に来て、Tさんがドアを開けるなり持っていた護身用の杖で、Tさんの左目下を突いた。左目の下がかなり腫れあがり、痛みも激しかった。
監理団体から「退職届」を見せられ、「何も言わずに辞めたら、次の仕事を探してあげる」と言われ、サインした。「警察に訴えたら、ひどい目に遭う。仕事は紹介しない」と言われたので、近くの交番に相談に行ったが、被害届は出していない。2か月経っても仕事を紹介してくれず、生活費が底をつき、寮に住んでいる他の実習生たちに食べさせてもらっていた。このままでは生きていけないし、強制帰国させられると考えSOSを発した。
3)第一機工 ベトナム人技能実習生 20代男性(建設・とび職)
2020年初めに来日。入社当初から、社長の対応は悪かった。「日本語ができない」という理由で、乱暴な態度をとり続けた。日本語ができないと、頭をたたかれたり、胸ぐらをつかまれて罵倒された。Kさんは社長による暴言、暴行にあい苦しんだ。書けない日本語があると、仕事が終わってから6時間かけてA4用紙で10枚も書かされた。10枚書けなかったら、次の日仕事をさせてもらえず、手取り給料3~4万円という月があった。「てめえなんかいらん。失踪せえ」などの暴言を怒鳴り上げられ、時には頭をたたかれ、胸ぐらをつかまれ、首を締め上げられた。物を投げたり、彼の私物を捨てたりは、日常的に行われていた。彼は、毎日が恐怖と不安の中にいた。
2020年8月頃、転籍を希望したが、監理団体も会社も帰国をさせようとし、強制的に帰国同意書にサインさせ、2号ロの試験も受けさせていない。帰国準備の寮に移されて、スクラムユニオンと繋がった。
2020年12月21日、団体交渉を行った。代理人弁護士を立て社長は団交に出てきた。指導の一貫であり、暴行とは違うという主張だったが、Kさんが録音していた暴言の音声を聞かせると、弁護士の顔色が一変した。次回団交で、未払い賃金の回答を受ける予定になっている。請求額は約97万円になる。Kさんは、現在自己都合退職扱いで、失業給付も受けられず、当然仕事もなく、全くの無収入の状態に置かれている。監理団体は生活保障すべきところを住宅を与えるだけで済まそうとしている。ひとりの人間が、住むところだけで生きていくことはできない。こんな非道な人権を無視したことが横行していることを許すわけにはいかない。スクラムユニオンとしてカンパを募りながら、支援していかねばならない。食べることもできない状況を見殺しにはできない。
4)元技能実習生の労災事件
氏名 L・Hさん 23歳
2019/1/30来日、2019/10に群馬県内の技能実習先(日正重機)から失踪、賃金が月に6~7万円しか支払われず、残業代もなかったため。友人を頼って東京に行き、その後福山に行く。
福山市の建設会社(實森組)で働いていた。(名刺あり)
本 社 福山市春日町浦上2593-5
営業所 福山市瀬戸町長和250-6
2020/7/23、朝6時頃、現場移動中に交通事故(電柱に激突)。
岡山労災病院に搬送、脊椎損傷・腰椎骨折で入院。
2020/10/29退院、その後は北川病院(岡山県和気町)にリハビリ通院している。
現在、歩くことはできるが、痛みと排尿、排泄困難に陥っている。
食事が十分取れず、15㎏~18㎏痩せた。(上記排泄困難のため)
会社が用意した宿舎におり、月2万円の生活費を渡されている。
場所は,〒709-0422 岡山県和気郡和気町尺所155-1
2部屋・台所に10人のベトナム人実習生、オ-バ-ステイの人がいる。
實森組が労災手続きをしないため、SOSを発した結果、スクラムユニオンにたどり着く。
現在、スクラムユニオンが労災手続きを行い、和気労基署に申請を行った。實森組は労災手続きを頑なに拒み、事故当日は遊びに行く途中だったとか、引越の途中だったとか理由をコロコロと変えながら、業務上ではなかったと主張している。しかも、スクラムユニオンからの団交要求に応えることもなく、Hさんを脅し、スクラムユニオンからの脱退を強要した。その連絡を受けて、すぐに身柄を確保し、シェルターで保護している。
5)M・Vさんの場合
事態は一本の電話から始まった。いつもベトナム人実習生の通訳を引き受けてくれるFさんからであった。失踪したベトナム人実習生が、友達を頼ってある会社の寮に住んでいたが、事業主に見つかり、追い出されることになった。何とかスクラムユニオンで対応してもらえないかという相談であった。
何とか対応してみると答えたものの今晩の宿泊先も当てのない状態であった。反貧困ネットのシェルターは満室状態であったし、すでに別のベトナム人実習生を保護してもらっており、あまり無理を言える状況ではなかった。ホテルに泊めようにも、失踪中のため、身分を証明できるものがない。
急遽、日本ベトナム協会の赤木さんに連絡を取って、その日の対応をお願いすることになった。次の日、広島駅で会って、スクラムユニオンの事務所に行き、くわしい事情を聞いた。
ベトナム人実習生Mさんは、2018年11月来日し、建設業で働くことになった。建設会社の社長はいい人であったが、何しろ仕事がなかった。1か月に12~13日労働で、手取額は6~7万円にしかならなかった。ベトナムの送り出し機関に支払うために100万円の借金をしてきたMさんは、2号のロにビザが変わった時に失踪を決意した。このままでは借金の返済もままならなかったためである。いくつか勤め先を変えたが、三重県で6か月働くことができた。そこの社長はいい人で、よく面倒も見てくれたが、ビザが切れたことで就労が不可能になった。その後は、就労もできず、友人や知人を頼って、1か月とか2週間とか食事をもらって命をつないできた。その最後が広島であった。行く当てもなく、所持金もほとんどない状態でSOSを発したのである。
広島入管で、短期滞在の就労可(週28時間)が許可された。当初は、とりあえず入管に届け出て、今後の対応を相談に行く予定であった。ところが、窓口の担当官は、失踪後の期間を短期滞在でつなぎ、最後の短期滞在を就労可とする提起してきた。受けたこちらの方が、聞き返すほどの内容で、失踪した実習生に対して、短期滞在とは言え、就労できるビザを発給してくれるとは予想外であった。コロナ禍という状況下で、しかも帰国困難という条件が重なり、上記の判断となったものである。今後もこのような判断が出るものならば、多くの実習生たちが救われる可能性がある。非常にうれしい判断であった。
Mさんは、早速就労先を探して、無事就労できている。